NHK【腎臓が寿命を決める】鍵となる成分はリン!EPOのメッセージとは?

人体は巨大なネットワークイメージ

腎臓といえば「おしっこ」をつくる役目の臓器として一般的に知られています。

10月1日(2017年)にタモリさんと山中伸弥さんの司会で放送されたNHKスペシャル「人体」神秘の巨大ネットワーク第1集によると…

「腎臓が私たちの寿命を決める臓器」であると、今までの地味なイメージを覆す新しい常識が語られていました。

そこで今回は、いま世界中の医療研究者から注目され、あなたの健康寿命を左右する要の臓器「腎臓」についてまとめてみました。

 

腎臓の位置と働き

 

腎臓の解剖図

 

先ずは、腎臓のある場所や構造、その働きと役割についての簡単な説明から始めます・・・

腎臓は背中側で腰の少し上あたりに位置し、背骨を中心に左右1つずつあります。

形はそら豆に似ており、握りこぶしくらいの大きさで、1つの重さが120~150gくらいです。

それぞれの腎臓には2本の太い血管(腎動脈・腎静脈)がつながっており、心臓から送り出される血液の1/4が流れ込んでいます。

また、1つの腎臓にはネフロン(腎単位)と呼ばれる糸球体尿細管を含む構造が約100万個存在します。

このネフロンの働きによって血液のろ過(糸球体)や再吸収分泌(尿細管)が行われているのです。

糸球体では1日あたり180Lの尿(原尿)が血液からろ過され、尿細管ではその内の99%が再吸収されて血液中に戻ります。

つまり、腎臓が作った原尿が「おしっこ」として体外に排出される割合は、ほんの1%(1~2L)に過ぎないのです。

腎臓とはおしっこを作って出す臓器というより、体の中を浄化する「フィルター」だといえるでしょう。

 

腎臓にはおもに4つの働きがあります…

  1. 血液中の老廃物を尿として体外に出す
  2. 水分や電解質の量を調節して体内バランスをとる
  3. 血圧を調節したり赤血球を増やすホルモンを分泌する
  4. ビタミンDを活性化させて骨を丈夫に保つ  

 

このように腎臓は大切な役割を持った臓器ですが、

NHKスペシャル「人体」第1集「腎臓が寿命を決める」では…

腎臓は脳に引けを取らない司令塔で、

人体ネットワークの要であるという驚くべき事実が実証されています。

 

高地順応とEPO(エリスロポエチン)

 

競泳トレーニングのイメージ

 

高地トレーニングでの変化

番組では、リオ五輪競泳金メダリスト金藤理恵さんの協力のもと標高2,100mの高原地帯・フラッグスタッフ(米国)で取材が行なわれました。

ここでは日本代表の水泳チームが長年高地トレーニングをしているそうです。

この酸素の薄い高地で泳ぎ終わった直後の選手たちの体の中の酸素量を測定すると…

平地では正常値が96~99%なのに対して、通常ではあり得ない80%代が出ました。

つまり、選手の体が酸素不足の状態になってるのです。

ところが2週間後、同じ検査をすると選手たちの酸素量は正常値に戻っていました。

この高地トレーニングで選手の何が変わったのでしょうか?

 

腎臓がEPOを大量に放出

トレーニングで鍛えられる臓器といえば、心臓や肺などの循環器や呼吸器系のイメージが強いですよね。

しかし、この2週間の間に鍛えられた臓器は「腎臓」です。

酸素が不足している状態になると腎臓がEPO(エリスロポエチン)と呼ばれるホルモンを分泌します。

EPOは「酸素が欲しい!酸素が欲しい!」というメッセージを伝えるホルモンです。

このメッセージ物質は血管の血流に乗って全身へと運ばれますが、EPOの場合、これを「骨」が受け取ります。

骨の中にある骨髄は血液細胞の製造工場と呼ばれ、EPOからのメッセージを読み取り、酸素を運ぶ赤血球を増産し始めるのです。

そして、全身の筋肉により多くの酸素が供給されることによって、選手の持久力もアップします。

この作用を高地順応と呼びます。

事実、金藤理恵さんが金メダルを獲った時の赤血球の割合は競技人生で最高の値だったそうです…

日常の生活の中でも腎臓はこのEPOを分泌しますが、腎不全になるとこの機能に障害が起こり貧血を起こします(腎性貧血)

 

高血圧とレニンの関係

 

腎臓のイメージ

 

腎デナベーション手術とは?

腎臓は、上記の腎臓の主な4つの働きで述べていますが、血圧もコントロールしています。

ドイツにある「ライプチヒ心臓センター」は、最先端の治療法で高血圧をターゲットとしている医療機関として世界的に注目されています。

高血圧は世界中で10億もの人が悩まされていて、脳卒中や心筋梗塞の原因にもなります。

この病院には他の病院から見放された重症の高血圧患者が訪れてきます。

そんな重症の高血圧を一気に治すといわれる治療法が腎デナベーション手術という外科手術です。

担当医は「心臓」の専門医ですが、手術する場所は「腎臓」なのです。

この手術は、太ももの血管からある装置を挿入し、血管の内側から熱を加え腎臓の神経の一部を焼き切るというものです。

 

レニンの分泌を抑えて高血圧を治す

体内ネットワークの要である腎臓は血圧の監視とコントロールをしています。

腎臓はレニンという酵素を分泌し、血液中のタンパク質と反応することによって強い血管収縮作用をもつアンジテンシンⅡとなり血圧を上げます。

腎臓は血圧を監視してレニンの分泌量を常に調整していますが、高血圧患者の多くは腎臓がレニンを出し過ぎていることが判明したのです。

腎デナベーション手術でレニンの分泌に関係する腎臓の神経を焼くことによって重度の高血圧も治療できるというわけです。

*この手術は欧州の高血圧治療ガイドラインで新治療として認められている一方で…

米国メドトロニック社(医療機器メーカー)が、プラシーボ(ニセ治療)と比較して腎デナベーション手術の効果を検証したところ…

腎デナベーション手術の患者とニセ治療を行った患者との間に有意な差は認められず、2014年1月に臨床試験を中止してしまったという経緯もあります。

その効果の是非が明らかになるまでには少し時間がかかりそうですね…

 

リンが寿命を決める鍵だった

 

リンの欠乏と過剰

腎臓が調整している血液の成分である「リンの量」が動物の寿命と大きく関係していることが注目されています。

血液中のリンが欠乏すると呼吸不全、心不全、骨軟化症、くる病などの病気にかかってしまいます。

その反面、リンが過剰になると老化を加速することが判明したのです。

動物にはほぼ決まった寿命があり、ネズミが3年、羊が20年、ゾウが70年と寿命が長い動物ほど体が大きい傾向があります。

しかし、その傾向にあてはまらない動物も存在します…

例えば、体の小さいハダカデバネズミやコウモリが約30年、人間はゾウよりも長い75年の寿命があります。

これらの長生きする動物には血液中のリンが少ないという共通点があります。

 

リンを多く含む食品とは?

リンを多く含む食品

 

リンが老化を加速すると聞けば、たぶんあなたは「リンを多く含む食品を避けなければ!」と思うかもしれません…

リンには、食材に含まれる「有機リン」と食品添加物の「無機リン」の2種類があります。

タンパク質と結合している「有機リン」は、肉類・魚類・卵・豆類・乳製品に多く含まれます。

一方、食品添加物の「無機リン=リン酸塩」は、ハムやソーセージなどの練り物、インスタント麺、缶詰、ファストフードなどの加工食品に使われています。

リン酸塩は、練り物の色や風味や保存性を高めたり、インスタント麺にコシをつけたり(かんすい)、缶詰の防腐剤として使われています。

食品に含まれる「有機リン」の量は、食物の栄養表などで調べることができますが、食品添加物の「無機リン」は、表示義務がないためどのくらい含まれているかを調べるのが困難です。

また、「有機リン」の腸での吸収率は20~40%くらいに対し、「無機リン」の場合は、ほぼ100%吸収されると言われています。

つまり、リンの摂取を少なくするには、先ず加工食品を避けることから始めるのが賢明な選択ですね。

*腎臓に問題のある方の血清リン濃度の管理は、医師や栄養士の指導の下に行うことをおすすめします。

 

老化加速マウスによる発見

リンが老化を加速するという発見のきっかけとなったのは、日本人科学者が発見した不思議なマウスでした。

遺伝子操作によって生まれた老化加速マウス。調べてみると腎臓の機能に関係する遺伝子が壊れていました。

腎臓ではリン(リン酸)の排泄と再吸収が行われ、体内のリンの量のバランスを保っていますが…

このマウスの腎臓はリンの調節ができず、リンの量が過剰になった結果、老化が加速されたのです。

リンと老化の因果関係まだ解明されていませんが、リンが増えすぎると血管内壁に石灰化が起こり動脈硬化を起こしてしまうことが原因の一つではないかと考えられています。

また、リンの過剰は骨粗しょうの原因にもなります。

これらの発見から「腎臓が健全なら寿命も延びる」といわれ、NHKの番組タイトル通り、「腎臓が寿命を決める」ゆえんとなっています。

 

腎臓は人体ネットワークの要

 

腎臓と全身ネットワーク

 

腎臓を監視する医療現場

現在、医療現場では腎臓への監視が新たな常識になってきています。

腎臓は人体のネットワークの要であり、臓器同士の対話における司令塔の役割を担っています。

臓器同士の対話は体中の血管を通して行われ、その要となる腎臓には多くの血管が集まっています。

また、腎臓以外の病気、例えば心不全も腎臓に悪影響を及ぼすことが分かってきました。

腎臓は人体ネットワークで他の臓器とも深いかかわりがあるので、どの臓器が悪くなっても腎臓に影響してしまうのです。

急性腎障害(AKI)は現在、世界的な問題になっています。先進国の5人に1人の入院患者がこの急性腎障害になっていることが判明したのです。

一体どんな理由で腎臓以外の病気の患者まで腎障害を起こすのでしょうか?

それは、腎臓が体内のネットワークの要であることに起因しています。

急性腎障害(AKI)による急激な腎機能低下は、命に関わる多臓器不全を引き起こしてしまいます。

 

薬が与える腎臓への影響

その様な事態を防ぐためにある病院では思い切った腎臓対策がとられています。

それは、一時的に薬を取るのを止めることです。

心臓から送られる血液全体の1/4が腎臓へと流れ込むため、腎臓は最も多く薬にさらされます。

病気で弱っっている腎臓に薬が最後の一撃を加えてしまうのです。

腎臓は一度やられると取り返しがつかなくなるので、一時的に薬を止めることが患者の命を救うのです。

このように、腎臓以外の病気に対して腎臓を要としておこなう治療は、医療の世界に大きなパラダイムシフトを起こしています。

その考えは方は東洋医学の考えるからだと病気のしくみに近く、今後のさらなる進展が期待されますね。

 

【腎臓が寿命を決める】のまとめ

 

  • 腎臓はあらゆる臓器と語り合う全身ネットワークの要である。
  • そのために腎臓は様々なメッセージ物質(ホルモン)を出す。
  • 腎臓から出るEPOは骨に酸素不足のメッセージを送り赤血球を増加させる。
  • 腎臓の出すレニンが過剰になると高血圧の原因となる。
  • 長寿を決める物質は「リン」で、少ない動物ほど長生きする。
  • 腎臓がダウンすると多臓器不全(AKI)の引き金となる。
  • 腎臓が健康なら私たちの寿命も延びる。
  • 病気の治療の時は常に腎臓を意識する必要がある。
  • 腎臓を守るために余分な薬は飲まないほうが良い。

 

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