今、世界中で注目されている薬品、「メルドニウム」・・・
その理由はもちろん、シャラポワ選手のドーピング検査陽性反応と2年間の大会出場停止措置・・・
英スポーツ医学専門誌によると、490名(メダリスト13名を含む)もの選手が、昨年度のバクーで開催された欧州総合競技大会で「メルドニウム」を使用していた可能性があることが判明しています。
このようにドーピング効果で一躍有名になった「メルドニウム」ですが、今回は、糖尿病や心臓病への効果の理由、メルドニウム(ミルドネート)の使用法、その販売と購入法、個人輸入は可能か?などついてまとめてみました。
目次
メルドニウムの開発と販売

「yahoo mapより抜粋」
メルドニウムは、1970年代にラトビア共和国(上記地図)のラトビア有機合成研究所で動物や鳥の成長を促進する物質として開発されました。
メルドニウムは、米国でも「動物や家禽(かきん=飼育する鳥)のための成長刺激」を想定して1984年に特許申請されています。
メルドニウムは、ブランド名:Mildronate(ミルドロネート)としてGrindeks社(グリンデクス)が販売し、ラトビア共和国の主要輸出品の一つとなっています。
現在、メルドニウムは他の会社によってジェネリックも販売されており、比較的安価な価格(60錠入りで1万円以内)です。
メルドニウムはなぜ米国で認可されないのか?
ただし、日本、米国、EUなどの多くの国では、この薬は認可されていません。
つまり、認可されている数か国を除いて、ほとんどの国では販売禁止です。
メルドニウムが、薬品大国である米国で認可されていないのには、ある理由からだそうです。
米国で医薬品の承認を取るためには、通常は膨大なお金がかかる臨床試験が必要とされます。
そのため、Grindeks社は米国での販売認可を申請しなかったそうです・・・
また、メルドニウムに関する特許の有効期限はすでに切れており、Grindeks社は他のジェネリックとの競合にさらされている状況だそうです。
実際に、メルドニウムが心臓病の治療薬として認可されている国は、ロシアをはじめ、旧ソビエト圏のほんの数カ国だと言われています。
ただし、Web上のオンラインストアで、この薬は販売されているので個人輸入(個人使用目的)として入手することは可能だと思います。
*「mildronate buy」で検索すればたくさんの販売サイトが出てきます。(ユーロまたはドル決済)
メルドニウム(ミルドネート)の使用量(使用法)は?
使用説明を読むと・・・
- 一般的には、毎朝500mg(1錠剤)を摂取してください。
- 500mg(1錠剤)を一日2回までは必要に応じて増やせます。
- アスリートのパフォーマンスの向上のためには、500㎎~1000㎎を一日2回摂取。
- 就寝時間の8時間前には摂取しないでください。
- 1日の最大摂取量は、2000㎎(500㎎を4錠)まで。
・・・などと書いてあります。
メルドニウムはロシアのドーピング人気薬

メルドニウムは、ロシアやその近隣の国では大変ポピュラーな薬で、安価で副作用も少ないのでスポーツのパフォーマンス向上のサプリメントとして摂っている人も多いそうです。
メルドニウムは、歴史的にも旧ソ連時代のアフガン侵攻の兵士に耐ストレス目的で使用されていました。
そして、そのロシアでのポピュラーさを象徴するかのように・・・
2015年のドーピングの検体分析をしたところ、ロシア人選手から採取された4316の検体のうち、724の検体からメルドニウムが検出されるという驚くべき結果が出ました。
これは、ロシア人選手の約6人に1人がメルドニウムを使用していたという計算です・・・
一方、シャラポワはロシア人選手ですが、メルドニウムの認可されていない米国フロリダ州に長年在住しているので、米国医師が糖尿病や心臓病の治療のために米国で認可されていない薬品を処方するとは考えにくいですね。
では次に、メルドニウムが心臓病や糖尿病に効果がある理由について分かりやすく説明しますね。
L-カルニチンとの関係
先ず、メルドニウムの働きを十分に理解するために、「L-カルニチン」について説明します。
たぶん、「L-カルニチン」の名前については、ドラッグストアやTVの宣伝などで聞いたことがある方も多いと思います。
L-カルニチンとは
L-カルニチンは、アミノ酸の一種で、体内の脂肪を燃焼しエネルギーに変えるための必要不可欠な栄養素です。
食品の中では赤身の肉に多く含まれ、L-カルニチンのほとんどはヒトの筋肉細胞に存在します。
ヒトの肝臓でも少量のL-カルニチンが作られますが、20代をピークに加齢とともに不足しがちになります。
この不足しがちな、L-カルニチンは、牛肉・羊肉・豚肉などの肉類を摂取することによって補うことができます。
そして、L-カルニチンを十分に摂取することが、脂肪の代謝を活発にして生活習慣病の予防にもつながります。
また、L-カルニチンは日本では心不全などの薬剤としても承認されていて、心不全などの患者さんに投与されることもあります。
L-カルニチンを阻害するメルドニウム
上記で説明したように、L-カルニチンはヒトの代謝にとって重要な物質です。
しかし、「メルドニウム」の作用機序は、L-カルニチンの代謝作用を阻害する働きによって心臓病に効果があるというのです・・・?
つまり、メルドニウムは、L-カルニチンの働き低下させて、L-カルニチンを合成する酵素である「γブチロメタニンヒドロキシラーゼ」を阻害する作用があるのです。
・・・では、なぜ上記の作用が心臓病に効果をもたらすのでしょうか???
心臓に良い効果があるといわれている、L-カルニチンの働きを低下させることによって心臓を守る理由とは?
糖尿病予防効果の理由(作用機序)
メルドニウムには、L-カルニチンの作用を低下させるという一見矛盾した作用があります。
しかし、ここが効果の出る「ミソの部分」です。
では、この理由について、できるだけシンプルに説明したいと思います。
まず、心臓は私たちが寝ても起きても働き続けてくれます。
心臓は通常エネルギー源として「糖質=ブドウ糖」よりも「脂肪酸」の方をメインに使って動いています。
なぜメインのエネルギーが「脂肪酸」かと言えば、「糖質=ブドウ糖」はエネルギー源としては燃料切れを起こしやすい性質があるからです。
しかし、瞬発力を必要とするような場合は、「糖質」の方が断然エネルギー効率が高くなります。
ガス(糖質)と灯油(脂肪酸)の燃焼効率の違いくらいのイメージをもたれると良いかも知れません。
ガスは火をつけた瞬間にボワッとよく燃えますよね・・・灯油はチロチロです。
メルドニウムを摂取して、L-カルニチンの働きを低下させることによって、心臓はメインのエネルギー源を「脂肪酸」から「糖質」にシフトすることができます。
ちょっとハイブリッドカーに似たシステムです!
街乗りの時は電気モーターを使った方が燃費の効率が良いですよね!
また、糖質をエネルギー消費するので、高血糖の場合は血糖値を下げる作用も期待できます。
そのうえ、「脂肪酸」をエネルギーに変換するときよりも、「糖質=ブドウ糖」をエネルギーに変換するときの方が、酸素の消費量を少なくできるので、そのぶん酸素を心臓や他の細胞にまわすことができます。
この理由で細胞への酸素の供給量が高まるのです!
そして、酸素の供給が十分な細胞が糖質や脂肪を分解することによって、エネルギー通貨であるATPもより多く生産され、長時間の運動が継続できます。
つまり、これがメルドニウムを使って心臓を虚血状態(酸素不足)から保護する作用ですね。
しかし、上記で説明した作用や効果が、糖尿病のような長期的な病気に期待できるかどうかは疑問です。
実際、推奨されているメルドニウムの服用期間は、使用説明書にも4~6週間と記されています。
糖尿病は、その病気自体よりも、合併症になった時にその恐ろしさが出る病気です。
そして、その合併症は長い年月をかけて血管が老化してもろくなり、心臓や脳の症状(心筋梗塞や脳梗塞)へと進行していきます。
糖質の消費を高め、細胞への酸素の供給を高める作用は、糖尿病への効果も期待できるでしょう。
しかし、長期的に使用することで合併症の予防の効果があるかどうかは不明です。
メルドニウムの糖尿病に関しての長期的な効果・効能は、まだまだエビデンス不足だと言えるでしょう。
つまり、シャラポワのケースのように糖尿病のために米国で認可もされていないメルドニウムを10年間も処方し続ける根拠はかなり弱いと思います。
米国で認可された薬(例えばメトホルミン)が、彼女のコンディションにとっての第一選択薬とならないのは、なんとも不思議なことですね・・・
メルドニウムには、むしろ、スポーツ選手などの瞬発力やスタミナアップなどの短期的な効果への期待のほうが大きいのではないでしょうか?
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*メルドニウムの効果と副作用に関しては、次記事をご参考ください!
⇒【メルドニウム】にはこんな効果と副作用が!シャラポワの陽性は故意?
*ステロイドのドーピングに関して次の記事をご参考ください!
*糖尿病に関しては以下の記事をご参考ください!
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⇒長芋(山芋)と菊芋の糖尿病への効能を比較!血糖値を下げる成分とは?
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